ごあいさつ

写真:理事長・学長 中尾 直之

公立大学法人 和歌山県立医科大学

理事長・学長  中尾 直之

医学部、薬学部、保健看護学部を擁する医療系総合大学として4年目を迎え、本学は自らその存在価値を確立し、挑戦と成長を続け、医療の発展に寄与し、社会貢献を果たす使命と責任を担っています。和歌山県立医科大学が将来に向かって飛躍を遂げるための基盤となるⅠ. 法人組織運営、Ⅱ.人材育成、Ⅲ. 研究活性化、Ⅳ. 附属病院機能と地域医療貢献についての考えを述べさせていただきます。

 

I. 法人組織運営

1. 社会貢献

地域医療への貢献はもちろん、地方創生や地域経済活性化への貢献を通して、社会の公器としての役割も本学の重要な機能です。

  1. 県内企業への支援活動
    県内企業の研究者の修士・博士取得を支援、産業界、企業との連携を強化して学術的立場から企業活動を支援します。
  2. 地域活性化の中核となる
    大学を起点に人の流れを変えて地域経済の活性化に貢献します。各学部において、県内入学者を一定程度確保して医療活動を通じた地域活性化を担う人材を育成します。

2. 国際化とグローバル展開

大学である以上、グローバル化は避けては通れない課題です。法人として、国際的な学術交流や共同研究を進め、国際的な視野を持ち、国際舞台で活躍できる人材を育成します。積極的な留学生の受け入れや国際協力プロジェクトを通じてグローバルなネットワークを構築します。

3. 情報基盤の整備とDX推進

電子カルテなどの病院医療情報部門と大学の情報管理部門を機能的に統合し、効率化を図ります。図書館などの教学部門の情報基盤整備、VR教育を臨床実習から基礎医学や教養科目にも拡充、附属病院のスマートホスピタル化(AIを用いた病院経営分析や診断、病床管理システム、臨床データの利活用システムの構築)など大学全体の医療情報技術を整備し、DXを推進します。

Ⅱ. 人材育成

1. 臨床参加型実習と多職種連携教育の強化

医・薬・看の3学部において、現場での臨床実習をより一層重視し、実践的なスキルとチームワークを養成するためのプログラム拡充・強化を図ります。地域の医療機関との連携を強化し、実際の医療現場での経験を提供します。

2. 地域医療を担う医療人育成

本学を将来の和歌山県の地域医療を担う優秀で使命感に満ちた医師、薬剤師、看護師を育成する拠点として、機能強化します。その第一歩として、卒前の地域マインド教育を拡充します。卒後は、卒後臨床研修センターを中心に各科とも連携・協力して、研修医にとって魅力ある充実した研修プログラムを構築し、より多くの初期臨床研修医や専攻医の受入を目指します。また、医学部の県民・地域医療枠、薬学部の県内枠出身者の卒後キャリア形成を支援し、グローバルな視野を持ちつつ意欲を持って地域医療に従事できる体制を構築します。

Ⅲ. 研究活性化

1. 学部横断的で多様な研究分野の推進

研究分野の多様性を尊重し、基礎研究から臨床研究まで幅広い分野に取り組める環境を整備します。令和6年4月の大学院医学薬学総合研究科設立を契機に学際的なプロジェクトや共同研究を奨励し、新たな視点を探求する革新的な研究プロジェクトに対しては財政支援する仕組みを作ります。研究活性化を通じて医・薬・看の連携を強化し、学部間の人的交流をより一層活発化します。

2. 医療データの利活用基盤の構築

医療情報を利活用できる環境を整備し、医療データサイエンスを推進します。検体の収集と診療情報とを紐づけたデータベースを有するバイオバンク事業を推進し、研究の活性化を図ります。全国の医療機関の診療情報を共通のフォーマットで収集するための新しい規格FHIR(ファイア)を電子カルテに導入し、ビッグデータの研究を可能にします。

Ⅳ. 附属病院機能と地域医療貢献

1. 地域医療構想において県内唯一の特定機能病院としての責任を果たす

地域医療構想が県内各病院と行政との間で議論されています。本学附属病院は高度先進医療を提供する本来機能をより一層強化すると同時に地域医療機関との緊密な連携と機能分担を推進し、県内の高度急性期から回復期に至るシームレスな医療提供体制の確立に向けて中心的な役割を担います。

2. デジタル情報通信技術(ICT)を活用した地域医療支援

ICTを活用した地域との医療情報連携や遠隔医療を今後さらに拡充し、県内医療の地域格差是正を図ります。また、ICT関連企業と連携して、ドローンにより医薬品を運ぶ実証実験をすでに実施していますが、近い将来にはドローンを活用した災害時などの僻地への医薬品配送などの医療支援を実現します。高齢化が全国的に進行する中、超高齢社会にすでに突入している和歌山県の大学病院のあり方やICTによる地域医療支援の取り組みは、今後の日本の地域医療のモデルケースになるものと考えています。